46話でチャングムは、友人で中宗側室のヨンセンの協力を得て、ヨンセンの部屋で中宗と対面。アヒル事件で罪を着せられたハン尚宮の汚名を晴らしたいとお願いします。
すると中宗は、「世子の力が弱まってしまい、王妃の勢力が増す。すると王妃が妻ではなく、わが子を脅かす存在となる」と話し、真相解明に及び腰な姿勢をみせます。事件の真実にうすうす気づいてはいても、真相を明らかにするのが王として正しいとは限らない。そんな君主としての見解が表れた言葉です。
「王妃がわが子を脅かす」という中宗の言葉は、当時の王室の状況を知っていないと、すぐには理解できないかもしれません。当時の王室では中宗の世継ぎは決まっていましたが、それはチャングムの後ろ盾となっている王妃(文定王后)の子ではなく、亡くなった前の王妃(章敬王后)の産んだ息子でした。

当然、文定王后には「わが息子を国王にしたい」という野心があります。朝廷の有力者たちは「次に王になる人やその生母」などに忠誠を尽くしておくと家門の将来が安心なので、それぞれの思惑のもとに動きます。世継ぎの座を約束された世子を支援するのが順当ですが、この世子の弱点は庇護すべき生母が亡くなっていることでした。あまり日の当たるところにいない人は、逆転のチャンスとばかりに文定王后の息子である慶源大君の側についたりもしたことでしょう。(あとはもちろん文定王后の一族やらも)
こういうふうに、正式な王妃が複数いてその息子も複数いると、熾烈な世継ぎ争いが起こるのが常。李氏朝鮮を順調に存続させなければならない中宗としては、次の王座に影響を及ぼすような争いは避けなければなりません。当時はオ・ギョモが世子の有力な後ろ盾だったため、硫黄アヒル事件を解明してオ・ギョモが追放されると世子を支える基盤がなくなることから、「世子の力が弱まり、王妃がわが子を脅かす存在になる」と口にしたのです。
このあたりの争いは、「女人天下」で詳細に(&お茶目に)描かれています。もっとこの時代の背景を知りたい!という方はお時間があればご覧ください。ただし「チャングム」のようなド根性ドラマではないので、清く正しいお心の方はショックを受ける可能性があります・・・