「馬医」にときどき出てくる怪しい(?)人体模型といえば、「鍼灸銅人経」 。
第1話では医女チャン・インジュが夜の書庫での秘密の訓練に使っていました。
「チャングム」でも医女見習い時代の33~34話でミニサイズ人形が登場してます。
ドラマでの説明によると、「鍼灸銅人経」は鍼を学ぶための教材。
ツボに打てば体内の水銀がタラリと流れ出し、ツボをはずせば鍼が通らないとか。
内医院の医官でも正確に打つのが難しいとされていますが、
鍼上手なスゴ腕医女チャン・インジュはビシバシと命中させており、
そのようすを隠れて見ていたカン・ドジュンたちが感嘆していました。
この人形は、ペク・クァンヒョンが医生をめざしはじめる13話にも再び登場。
よく観察してみるとちょっぴりキモゆるキャラ系の味わいあるルックスです♪
穴に命中させるたびに「ご明解~」とばかりに水銀が出てきて、ゲームのよう。
なんだか黒ひげ危機一発を思い出してしまったのは私だけでしょうか?。
それにしてもこの「鍼灸銅人経」、とってもよくできた仕掛けの人形ですよね。
説明が具体的なのでおそらく実際に存在はしたのだろうとは思いましたが、
本当はどんなものだったのかとか、なぜ水銀なのかなどが気になっていました。
・・・と思いつつもこれ以上追及する気は特になかったのですが、
中国医学の歴史に関する古本がとっても安かったのでふと買ってみたら、
なんと「鍼灸銅人経」のことが掲載されていました!
手がかりがわかったので中国サイトを調べてみたらちゃんと情報がありました。
そんなわけで今回は「鍼灸銅人経」についてご紹介します。
「鍼灸銅人経」をつくったのは、北宋の仁宗の時代に翰林院の医官だった王惟一。
生没年は不詳とあったり、987年-1067年と書かれていたりもします。
当時、李氏朝鮮はまだ興っておらず、その前の高麗時代の最初の頃ですね。
中国では古来から独自の医学が発展を遂げていましたが、
学説というか鍼の方法が書物によって異なっていることもあったそうです。
これらをきちんと統一化・標準化しようという流れになったのが北宋期。
そこで鍼にすぐれていた王惟一がバラバラだった情報をまとめたり訂正したりして
『銅人腧穴鍼灸図経』という書物を著したそうです。(その道では有名らしい)
彼は『銅人腧穴鍼灸図経』をカタチにした精銅製の人形も製作しました。
これこそが「馬医」に登場する「鍼灸銅人経(鍼灸銅人式)」。
そのボディには354個の腧穴が開けられ、穴名も記されていました。
背中部分がパカッと開く仕組みになっており、そこから「水」を入れて満たし、
人形の表面には「黄ロウ(蜜ロウ)」を塗って穴をふさぎました。
だから鍼が命中するとロウに穴が開いて人形の中から水がでてくるのです。
ちなみに「水」ではなく「水銀」を入れたと書かれているものもありますので
「馬医」では水銀がタラリと出てくるという設定になっているわけですね!
「鍼灸銅人経」はよくできた美しい人形だったので仁宗はたいそう気に入り、
一つを観賞用として相国寺(北宋の都にあったとても立派なお寺)に置き、
一つは医官たちの勉強や採用試験のために使わせました。
ちなみに受験生は目隠ししてツボに命中させなければならなかったそうです。
それから約500年後、凌雲という名医のウワサを聞きつけた明の孝宗が、
布で覆った「鍼灸銅人経」に鍼を打たせて凌雲を試してみたところ
ビシバシと百発百中させたので御医に任じたというエピソードもあるそうです。
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